ZEH普及を掲げる会社の営業職、実際の仕事は何をするのか

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転職サイトを眺めていると、「ZEH普及」「省エネ・創エネ・蓄エネ」といった言葉を掲げた会社の営業職求人が、以前より確実に増えています。

給与レンジも悪くない。
未経験歓迎と書いてある。
ただ、肝心の「毎日何をする仕事なのか」が、求人票を読んでもいまひとつ像を結ばない。

そう感じている方は多いと思います。

はじめまして、橋本良介と申します。
新卒で大手ハウスメーカーの営業を6年やったあと、住宅設備と再生可能エネルギー業界に特化した人材紹介会社でキャリアアドバイザーを8年務めました。
のべ500名以上の転職相談を受けてきて、いまはフリーの転職コンサルタントとして活動しています。

この記事では、ZEH関連の営業職が実際にどんな一日を送っているのかを、制度の話と実在の求人票の両方から具体的に書いていきます。
良い部分だけでなく、入ってから「聞いていた話と違う」となりやすいポイントも正直に触れます。

そもそもZEHとは何か、なぜ関連企業の採用が増えているのか

まず前提を短く整理させてください。
ここが分かっていないと、求人票に並ぶ商材の意味が読めません。

ZEHは「使うエネルギーと創るエネルギーの収支をゼロにする家」

ZEH(ゼッチ)は、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略です。

資源エネルギー庁の定義では、断熱性能を大きく高めたうえで高効率な設備を導入し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーを組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量の収支をおおむねゼロにすることを目指した住宅を指します。

要するに「なるべく使わない家にして、足りない分は自分で創る」という考え方です。
制度の全体像は資源エネルギー庁のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の紹介ページにまとまっているので、面接前に一度目を通しておくと話が早くなります。

2025年4月から、新築住宅は省エネ基準への適合が義務になった

採用が増えている背景には、はっきりした制度変更があります。

国土交通省によると、2025年4月以降に工事へ着手するすべての新築建築物について、省エネ基準への適合が義務化されました。
これまでは一定規模以上の非住宅だけが対象でしたが、木造の戸建住宅を含む全体へ広がったわけです。

さらに国土交通省は、遅くとも2030年までに省エネ基準の水準をZEH・ZEB水準へ引き上げる方針も示しています。
制度の要点は国土交通省の省エネ住宅特設ページで確認できます。

つまりこの業界は、景気の波だけで動いているのではなく、法律と国の目標に背中を押されている構造になっています。
私が候補者に「この業界は当面なくならない」と言えるのは、この一点があるからです。

新築戸建のZEH化率は30.5%まで来ている

数字も見ておきましょう。

一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が2025年12月22日に公表した調査結果によると、2024年度の新築戸建住宅におけるZEHシリーズの供給戸数は104,886戸で、着工統計にみるZEH化率は30.5%でした。
注文戸建に限れば42.6%、建売戸建では8.6%と、内訳には大きな差があります。

新築の3割がZEHという水準は、10年前を知っている身からすると相当な変化です。
ただし裏を返せば、既存住宅の大半はまだ手つかずということでもあります。
この「既築マーケット」こそが、住宅エネルギー系の営業職が主戦場にしている領域です。

営業が扱うのは「省エネ・創エネ・蓄エネ」の3種類

求人票に並ぶ商材は、整理するとだいたい次の3つに収まります。

分類役割代表的な設備
省エネエネルギーの使用量を減らすエコキュート、IHクッキングヒーター、二重サッシ、給湯器
創エネエネルギーを自分で創る住宅用太陽光発電システム
蓄エネ創った電気を貯めて使う家庭用蓄電池

ここ数年で存在感が増しているのが蓄電池です。

SIIの同じ調査では、令和7年度の戸建ZEH補助事業で交付決定を受けた案件のうち、追加設備として導入された蓄電システムの蓄電容量の平均値が9.3kWhとなり、過去最大を記録しました。
電気料金の高騰と売電価格の下落を受けて、創った電気を売るより自分で使うほうが得だという判断が広がっているためです。

営業の現場で言えば、「太陽光を売る仕事」から「家全体のエネルギーの使い方を組み替える仕事」へ寄ってきている、という感覚が近いと思います。

実際の一日は何をしているのか

ここからが本題です。
制度の話は面接対策になりますが、入社後に効いてくるのは日々の動き方のほうです。

具体例として、株式会社エスコシステムズという会社の求人票を見てみます。
東京都中央区に本社を置く、ENEOSサンエナジーの販売代理店で、太陽光発電や蓄電池といった省エネ設備を一般家庭へ提供している会社です。

なぜこの会社かというと、業務の流れが求人票にかなり細かく書かれていて、業界の仕事の型を説明する教材として分かりやすいからです。

完全分業制という設計

同社の募集では、営業プロセスが3つの担当に分かれています。

  • アポイント担当が、訪問の日時を設定する
  • アプローチ担当が、実際に自宅を訪問し、導入済み設備の稼働状況を点検しながら困りごとをヒアリングする
  • 契約担当が、ヒアリング内容をもとに具体的な提案を行い、契約を目指す

対象になるのは、すでに同社から設備を導入している約1万1千世帯の既存顧客です。
新規の飛び込みで一から関係を作るのではなく、すでに取引のある家庭を回るフォロー型の営業ということになります。

各担当とも1日の訪問件数は3〜4件程度と明記されています。
1日20軒も30軒も回るタイプの仕事ではありません。

私はこの分業制を、未経験者にとっては入りやすい設計だと見ています。
住宅設備は単価が数十万円から数百万円になる商材で、初回接触からクロージングまでを一人で背負うと、最初の半年で心が折れる人が一定数出ます。
役割を切り分けてあれば、まず「訪問して話を聞く」ところだけを覚えればいい。

一方で、向き不向きもはっきり出ます。
自分で見つけた客を自分で仕留めたいタイプの人には、分業制は物足りなく感じられるはずです。

給与例をどう読むか

同社の求人票には、次のような給与例が掲載されています。

担当月の実績例月給例
アポイント担当35件訪問し、11件を契約担当へ引き継ぎ、5件が契約45.3万円
契約担当18件訪問し、9件が契約55.5万円

賃金の内訳は、基本給18万〜30万円、その他固定手当3.3万円、固定残業手当6.7万〜8万円(固定残業時間42時間分)で、月給としては28万〜41.3万円。
予定年収は500万〜700万円と記載されています。

ここで注意して読んでほしいのが2点あります。

ひとつは、予定年収がインセンティブを含んだ想定額であること。
求人票にもその旨が明記されています。
成果が出なければ下振れする性質のものなので、固定部分だけで生活が成り立つかは自分で計算しておくべきです。

もうひとつは、固定残業時間が42時間分含まれている点です。
超過分は追加支給されると書かれていますが、月42時間という設定は、それなりの残業を前提に組まれた給与体系だと読むのが自然です。

このあたりを含めた最新の募集要項はエスコシステムズの求人・中途採用情報ページで確認できるので、条件面は必ず一次情報で見てください。
求人媒体によって掲載時期や職種が違い、金額の書き方も変わります。

なお同社の募集では、契約担当が成約した案件に関わったアプローチ担当にもインセンティブが支給される仕組みだと説明されています。
分業制でインセンティブが分配されるかどうかは会社ごとに違うので、面接で必ず聞くべき項目です。

「訪問販売」というイメージとどう向き合うか

この業界を検討する人が最後まで引っかかるのが、訪問販売のイメージだと思います。
ここは正直に書きます。

点検商法の相談は2024年度に613件まで増えた

国民生活センターが2025年6月4日に公表した資料によると、太陽光発電システムの点検商法に関する相談件数は、2017年度の57件から年々増加し、2024年度は613件に達しました。
2023年度の304件から1年でおよそ2倍です。

「法律で義務になった」「無料で点検する」と持ちかけて不安をあおり、高額な契約につなげる手口が問題視されています。
詳しくは国民生活センターの太陽光発電システムの点検商法に関する注意喚起を読んでみてください。

これは業界にとって不都合な事実ですが、転職を考える人ほど知っておいたほうがいいと私は思っています。
なぜなら、この仕事は「業界全体が疑われている状態から信頼を作る仕事」だからです。

求人票の言葉と実態を照らし合わせる

先ほどのエスコシステムズの求人票には、「飛び込みや押し売りは一切なし」「押し売りは一切なく、本当の意味で顧客のための提案ができる」という趣旨の記載があります。
既存顧客のフォローが中心という業務内容と、この打ち出しは整合しています。

ただ、求人票の表現をそのまま信じ切るのではなく、面接で次のように確認するのが実務的です。

  • 訪問先のリストはどうやって作られているのか
  • 1日の訪問件数と移動範囲はどれくらいか
  • 断られた顧客への再アプローチはどう扱っているか
  • クーリング・オフや契約後のトラブルは月にどれくらい発生しているか

最後の質問は聞きにくいかもしれませんが、答え方で会社の姿勢がかなり分かります。
数字を持っていて淡々と答える会社は、少なくとも管理はしています。

未経験から入る人が確認しておくべきこと

この業界は未経験採用が活発です。
先ほどの求人票でも、リレーション課11名の在籍者として、元塾講師、元料理人、元携帯販売員、元カーディーラーといった経歴が挙げられています。
入社後は座学研修、ロープレ研修、現場でのOJTを合わせて3か月の研修期間が設けられています。

そのうえで、応募前に自分で確かめておくべき点を挙げておきます。

  • 固定給とインセンティブの比率、および固定残業時間の設定
  • 新規開拓か既存フォローか、リストの出どころ
  • 施工は自社か協力会社か(トラブル時の対応スピードに直結します)
  • 研修期間中の給与条件(試用期間で下がる会社は珍しくありません)
  • 土日祝の勤務有無

最後の項目は生活への影響が大きいところです。
一般家庭が相手の仕事である以上、土日にアポイントが集中するのは業界の構造上避けられません。
平日休みが取れる働き方を受け入れられるかどうかは、入社前に自分の中で答えを出しておいてください。

向いているのは、商品説明より先に相手の話を聞ける人です。
逆に、短期間で大きく稼ぐことだけを目的にしている人は、この業界のフォロー型営業とは相性がよくありません。
既存顧客を回る仕事は、地味な積み重ねの上に数字が乗るからです。

まとめ

ZEH普及を掲げる会社の営業職について、制度と実際の業務の両面から見てきました。

要点を整理します。

  • 2025年4月から新築の省エネ基準適合が義務化され、2030年にはZEH水準への引き上げが予定されている
  • 新築戸建のZEH化率は30.5%(2024年度実績)まで上昇したが、既存住宅の大半は未対応で、そこが営業の主戦場になっている
  • 仕事の中身は会社によって差が大きく、分業制でフォロー中心の会社もあれば、新規開拓中心の会社もある
  • 求人票の年収はインセンティブ込みの想定額であることが多く、固定部分と固定残業時間を必ず確認する
  • 点検商法の相談増加という業界課題があり、信頼を作れる人が評価される構造になっている

制度が追い風になっている業界で営業を経験しておくことは、キャリアとして悪くない選択だと私は考えています。
ただし「未経験歓迎」「高収入可能」という言葉だけで決めてしまうと、入ってから苦しくなります。

求人票を1行ずつ読み解いて、分からないところは面接で聞く。
遠回りのようですが、これが一番確実です。

あなたの転職が、納得のいくものになることを願っています。

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